10月勉強会「エンド症例ディスカッション」

講師:吉岡 隆知先生、吉岡 俊彦先生

患者様からよく尋ねられるのが、根管治療にかかる時間や通院回数です。根管治療は歯科医師にとっても非常に難しく、治療の経過が見通しにくいものと言えるでしょう。根管の形態は個人差があり、治療を行う歯科医師も盲目的に根管内を操作することが多いため、通院回数や治療期間が長引くことがあります。

今回の勉強会では、「1回治療」と「複数回治療」のどちらが優れているのかと、その判断基準について実際の症例を元にディスカッションしました。

1回治療のメリットとしては、通院回数が1回で済むこと、仮封のリスクを回避できること、全体の治療時間が短縮されることなどが挙げられます。対照的に、複数回治療のメリットは、症状の経過を確認しながら治療を進められること、根管の見落としや不完全な形成を再確認できること、根管貼薬の効果が期待できることなどです。そして、治療の要件をしっかり満たせていれば、1回治療でも複数回治療でも治療成績に大きな差はないという研究結果もあることが分かっています。

しかしながら、1回の治療で十分な治療ができていない場合、病変が生じてしまい、周囲組織にダメージを与えるリスクが高まります。そのため、十分な治療時間の確保や事前の説明、そして計画的な治療が不可欠です。現段階では私自身、根管治療を難しく感じており、基本的には複数回治療を推奨しています。1回治療を選択する場合は、簡単なケースや、離島からの患者様のような特別な事情を考慮し、治療中に根尖からの出血や滲出液などがないことを確認した上で行います。

患者様の多くは「短期間・少回数」の治療を望むと感じます。しかし、患者様のニーズだけに流されず、状況に応じて十分な説明を行い、複数回治療の意義を理解していただくことが大切です。技術向上はもちろん大切ですが、患者様との信頼関係も不可欠です。これを意識し、上級の先生方を模範に学び続けていきたいと思っています。

研修歯科医師 古堅 育男